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美容室の倒産が過去最多|店が増え続けるのになぜ潰れる?【2025年】

目次

    美容室の倒産が止まらない。信用調査会社の集計では、2025年の倒産件数は過去最多を更新し、増加は3年連続となった。

    その一方で、全国の美容室の数そのものは、これも過去最多を更新し続けている。店は増えているのに、倒産も最多。この一見矛盾した状況の中身を、帝国データバンク・東京商工リサーチの調査と、厚生労働省の統計から読み解く。

    倒産件数は3年連続で増加し、過去最多を更新

    帝国データバンクによると、2025年に発生した美容室の倒産(負債1000万円以上の法的整理)は​235件​​で、前年の215件を上回り、2年連続で過去最多を更新した。倒産件数の増加そのものは3年連続である。

    年の途中で見ても勢いは明らかで、2025年1〜8月の倒産は157件と、前年同期の139件をすでに上回っていた。

    別の信用調査会社である東京商工リサーチの集計でも、対象範囲の取り方が違うため件数は異なるものの、傾向は同じだ。同社の「美容業」の倒産は2025年に120件に達し、こちらは過去20年で最多を記録している。

    どちらの調査でも結論は変わらない。美容室の倒産は、今もっとも数が多い局面にある。

    店舗数は減るどころか、むしろ過去最多に増えている

    ここで意外に思われるのが、店舗の総数だ。

    厚生労働省「衛生行政報告例」によると、全国の美容所の数は2024年度末で​27万7,752施設​​。前年度の27万4,070施設から1.3%増え、こちらも過去最多を更新している。長期的に見ても美容室は一貫して増え続けており、その推移は【50年の推移】美容室は2.4倍に増加で詳しく触れている。

    つまり、市場全体としては店が増え続けているのに、その裏で過去最多の店が退場している。新規開業が活発な分だけ競争が激しくなり、体力の乏しい店から淘汰されていく。倒産の増加は、業界が縮小しているからではなく、むしろ「増えすぎている」ことの裏返しなのだ。

    人口に対して美容室がどれだけ多いかは、美容室・理容室が多い都道府県ランキングでも地域差が見える。

    倒産理由の8割は「販売不振」

    では、何が直接の引き金になっているのか。

    東京商工リサーチが集計した2025年1〜9月の美容業の倒産原因を見ると、​​販売不振が83.6%​​と圧倒的だ。経営の派手な失敗や放漫経営ではなく、単純に「客が思うように入らない」ことで力尽きるケースが大半を占める。

    華やかなイメージのある美容業界だが、その実態は、日々の集客に苦しんで静かに店を閉じていく小さな事業者の積み重ねである。

    潰れているのは、規模の小さな個人店

    倒産した店の顔ぶれを見ると、その多くが小規模な店だとわかる。

    東京商工リサーチの集計では、2025年1〜9月の倒産のうち、資本金1000万円未満の事業者が​93.4%​​。負債額も「1000万円以上5000万円未満」が84.7%と、決して大きくはない。帝国データバンクの調べでも、倒産した美容室の9割超が資本金1000万円未満だった。

    設立からの年数も短くなっている。帝国データバンクによると、2025年に倒産した美容室のうち​​設立10年未満が49.0%​​と約半数を占め、設立から倒産までの平均期間は13.0年だった。独立して自分の店を構えたものの、10年もたずに看板を下ろす例が目立つ。

    開業のハードルが比較的低い業種だからこそ、参入も多いが、退場も早い。美容室経営の厳しさが、数字にそのまま表れている。

    背景にある「三重苦」と美容師不足

    小さな店を追い込んでいるのは、複数の逆風が同時に吹いていることだ。調査会社はこれを「三重苦」と表現する。

    ひとつは​​競争激化​​。大手チェーン店や低価格のカット専門店が広がり、そこへ個人サロンの新規開業が加わって、客の奪い合いが起きている。

    ふたつめは​​コスト高​​。シャンプーやカラー剤などの美容資材の値上げに、水道光熱費やテナント料の上昇が重なる。それでいて、消費者の節約志向が強まっているため、料金にそのまま転嫁しづらい。値上げどころか、新規店が割引クーポンを配るなど、実質的な値下げ競争まで起きている。

    みっつめは​​人手不足​​。スタイリストの「フリーランス化」が進み、スキルや知名度のある人材ほど雇いづらくなった。低賃金と長時間労働を嫌って既存スタッフが流出し、店を回せなくなるケースも出ている。帝国データバンクによれば、人手不足が直接の引き金になった倒産は2025年1〜8月だけで9件と、すでに前年1年分に並んだ。

    技術や立地だけでは差がつきにくい美容室にとって、この三つが同時に効いてくると、小さな店ほど踏みとどまるのが難しくなる。

    それでも生き残る店は何が違うのか

    厳しい数字が並ぶが、すべての店が苦しいわけではない。

    帝国データバンクの調査では、口コミやSNSによる集客がうまく回り、増益を確保した美容室もある。明暗を分けているのは、値下げ競争に巻き込まれず、「値上げに見合う価値」を提供できているかどうかだ。

    サービスごとに段階的な価格を設定したり、常連客向けの限定メニューを用意したり、顧客データを使った販促に取り組んだりと、価格と価値の見直しを進める店が増えている。単に安さで勝負するのではなく、「この店だから通う」という理由をつくれるかが、これからの分かれ目になりそうだ。

    まとめ

    • 2025年の美容室の倒産は235件(帝国データバンク調べ)で、2年連続の過去最多。増加は3年連続。
    • その一方で美容室の総数は27万7,752施設と過去最多。店は増え続けており、競争激化が淘汰を招いている。
    • 倒産原因の8割超は「販売不振」。潰れているのは資本金1000万円未満の小規模な個人店が大半。
    • 競争激化・コスト高・人手不足の「三重苦」が、体力の乏しい店を追い込んでいる。
    • 値下げ競争ではなく、値上げに見合う価値を提供できる店が生き残りつつある。

    身近な美容室・理容室を探すなら、エリア別の店舗一覧から近くのお店をチェックしてみてください。

    (出典:帝国データバンク「美容室の倒産動向」2025年、東京商工リサーチ「美容業の倒産」2025年、厚生労働省「衛生行政報告例」令和6年度)